わたさきの徒然日記

徒然なるままに日暮スマホに向かいて

気になるワンシーン

今日も見にきてくれてありがとうございます!
最近、漫画や小説を読む時間が凄く増えました。
アプリって本当に便利。すごいですね。
小説はやはり紙じゃないとなんか読みにくくて、あまり率先して読んではいなかったのです。でも少しずつ読んでいくうちに段々慣れてきて、今では漫画と同じくらいの量を読んでいます。

ファンタジーとか恋愛モノばっかだけどね!!!!!


そんな恋愛モノの作品の中でね、もう気になって気になって気になってたまらないシーンがあるんですよ。


タクシーの中でかなり大事な人生語りとか、こっ恥ずかしい口説き文句とかしすぎ!!!!
なんならイチャコラしだす輩多過ぎ!!!!!
タクシーの運転手さん全力で空気になってくれてんじゃん!!!!!!


とか思い出したらもうそういうシーンは違う方面でニヤニヤしちゃってたまらんくなりまして。
たまらんくなったまま寝たらそんな雰囲気の夢までみちゃったので、深夜のテンションでの乱文ですが書き留めてみましたものをお時間ある方はどうぞ引き続きご覧くださいませ。思いのほか長文になりました。日本語可哀想な所は多めにみてくださいまし。ちなみに運転手様のイメージは舘ひろし様です😂

おしまいっ!!






私は今日も、空気になる。
降りしきる雨の中、車を走らせる。時刻は既に0時を回っているが飲み屋の多いこの辺りにはまだ人通りがあった。送迎の文字を光らせてはいるものの酔った人たちの目には入らないのか、中には手を上げて寄ってくる人もいる。

そんな大通りから少し外れた目的の店にたどり着くと、その店の軒下にスーツ姿の男女が程よい距離を保ちながら立っていた。声をかけ名前を確認し、ドアを開く。女性が少しおぼつかない足取りで先に乗り込み、後から男性が乗り住所を告げられる。カーナビに先程の住所を確認しながら打ち込み、メーターのボタンを押した。


走り出した車内はとても静かだった。昔はよくこちら側から話しかけ、そんな運転手との会話を楽しむ方も多かったが、最近は音楽を聴いたり、携帯をいじったりと、話しかけないでくれというオーラを放つ人の方が多い。なので率先して話しかける事も少なくなった。そのため車の走行音と雨の音だけが響いている。

「別に、酔ったノリで、とかじゃ、ないですから」

しばらくして、男性がポツリとそう呟いた。

「ずっと見てたんです。先輩のこと」

始まった。
私はそっと自分の気配を消すことに専念する。よくあるのだ。特にこの時間帯は。
詳しい事などもちろん知らないし、知ろうとも思わないし、口を挟むこともないが、よくあるのだ。ただの同僚として会社の人達と別れ2人になった途端に甘ったるい言葉を紡ぎ始めたり、突然過去の体験談や家族との確執を語り始めながら口説き始めたり、ピッタリとくっついたまま乗り込んでこちらを1mmも意識することなくイチャイチャしだしたり、本当に、よく、あるのだ。

そんな経験を何度もしていれば、自分自身を空気として認識し気配を消すことにも慣れてくる。むしろ慣れなければやっていられない。同僚の中には茶々を入れて楽しむ者もいるが、私は自分が空気となることを苦としていないので、今もまた出来るだけ存在を消す気持ちでいる。

「でも、私は……」

例にも漏れず、女性が過去の恋愛経験を語り始めるのを遠くの方で確認する。でも、とか言っている場合ではないのだ。信号をあと3つ通過すればもう目的地に着いてしまう。結論の出ないままあなた方を路上に放り出すことになる。1つ目の信号は赤だった。赤になったばかりだ。少しは時間を稼げる。

「それでもいいんです。だって俺は……」

そうだ!男性よ!もっと押せ!!グイグイ押せ!時間がないぞ!
信号が青に変わりソロソロと動き始め、後続車もいないのでスピードを制限速度より少し落として走り出したところで気づく。まずい。男性も語り始めてしまった。それなのにも関わらず、2つ目の信号は無情にも青だった。まずい。これはまずい。車内で焦っているのは私だけか。男性よ。近所に来ていることに気づいてくれ……。

「先輩が好きです。付き合ってください」

その言葉を男性が告げたのは、3つ目の信号目前である。しかし今までの流れからして女性が即答するとは考えにくい。しかしこの信号を曲がればもう本当にすぐそこだ。信号を曲がってもう1本路地を曲がれば目的地だ。女性の答えがでる前に、着きましたよ、なんて言えない。言える雰囲気ではない。
女性だけでなく私にも決断は迫られていた。どうする。どうする……。


私は信号を曲がらずに通過した。
もう1本先の道を行こう。多少遠回りになるが、1メーター上がるかもしれないが、もうそうするしかない。ナビが右折とか言わないように音量も消した。空気なりの配慮である。頼む。早く!早く答えてあげてくれえええええ!

「よろしく、お願いします」

消え入りそうな声で女性がそう答えたのは、目的地へ到着する本当に数メートル手間だった。これ以上は遠回り出来ないと焦っていた私にとって女性の……いや、彼女さんのその言葉はまるで天上のオーケストラよりも美しく心に響くものだった。そんな気分になった。

「着きましたよ」

喜びを噛みしめる2人に、そっと声をかけた。彼氏さんから料金を受け取り、ドアを開く。ありがとうございましたと言いながら降りた2人は、乗り込んできた時よりも確かにその距離を縮めて雨の中を歩き始めた。

そんな2人の背中を見送りボードに記入していると無線が鳴る。別のお客様がお呼びらしい。さて、今度はどんなお客様が乗り込んでくるのか。コーヒーで喉を潤し、私は車を走らせた。


私は今日も、空気になる。



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お粗末様でした!